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●コラム:レコード屋とサーバーサービス かくだよしあき
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僕は中学生の時に、気がついたらレコード屋をやっていた。
それは、あるレコード屋さんとの出会いから始まった。
そこは、スタンプサービスをやっていて、スタンプがたまったら、レコー
ドを1枚くれていた。
それを利用すると、LPを10枚買うと1枚がただでもらえた。
友にもそのことを教えると、みんながそのレコード屋さんを利用するよ
うになった。
しかし、普通の友達は月に1枚ぐらしか買わないのであまりお得感がない
し、また、みんなからすると場所がちょっと遠かったので、不便だという
ことで、僕が代わりに買ってきてあげることがあった。
僕は当時、月に4〜5枚買っていたので、特別に4枚で1枚もらっていた。
だから、それを利用すると、みんなもさらに安く買えて、僕も何枚かを無
料でもらえることがあった。
しばらくすると、みんなが僕に「荒井由美のLPは今度いつ出るの?」と
か「サザンは?」とか聞くようになってきて、そのうち「買っといて〜」
とか、言うようになってきた。
そこで、最初から少し安く売ってあげることにした。
本来は、4枚の値段で5枚買えるので、1枚あたり20%安くなるが、そ
れをみんなには、10%引きぐらいで売ってあげていた。
そうすると僕は、10人の友達に売れば、1枚がただで手にはいることに
なった。
それで僕は、新聞を作ることにした。
その新聞には、どんなレコードが売り出されるかとか、どんなレコードか
とかいうコメントを載せていた。また、毎月のLP発売の新譜情報などを
掲載していた。
「○月○日にイーグルスのLPが出ます」とか「×月×日にTOTOの3
枚目のLPが出ます」とか書いていた。
それを学校で配っていて、そこに「10%安く買えます!」と書いていた
ら、みんなはが僕にレコードを頼むようになってきた。
それが、口コミで広がり、他の学校の人からも頼まれるようになってきた。
そして、それを手伝ってくれる人には、レコードを毎月1枚あげて、注文を
まとめてもらっていた。
しばらくすると、3〜4つの学校からの注文が来るようになっていた。
そのころの僕には、まさにレコードが通貨みたいな役割を果たしていた。
そうして、結局、僕は毎月150枚ぐらいのレコードを販売していて、レ
コード屋さんも、値引率をあげてくれたりしたので、結果的に、僕は毎月
10枚ぐらいのレコードを、ただでもらえるようになっていた。
僕がやっていたそのレコード屋さんの名前は「Milk」という名前で、
ロゴもあって、「i」の上の点が、なんと☆になっていた。
なぜ、そんな名前にしたのか、今となっては不明だけれど・・・
そういえば、ペンシルの最初のビジネスも、そのレコード屋さんと同じよ
うな始まり方だった。
4年前、当時、日本で独自ドメインをとろうとすると、月に20万ぐらい
のお金が必要だった。しかし、アメリカでは20〜30$で独自ドメイン
が持てると聞いて、僕はさっそく申し込んで使ってみた。
そして、それを名刺に印刷して、みんなにみせびらかしていた。
そうすると、知り合いがみんなほしいと言い出したので、どんどん紹介し
てあげていた。
でも、相手がアメリカの会社なので、ホームページも英語だし、サポート
も当然英語だったので、代行してあげたときもあった。
それが、いつの間にか費用をもらえるようになっていた。
そのうち、ホームページを作って、ドメインに対するQ&Aなども載せて、
僕はドメインを売り始めた。
それが、結果的に日本初の「.comドメイン」サービス(1万円をきっ
た)となり、これが爆発的に売れた。
ダイエーホークスやニッカウヰスキー、エプソン販売、ヤマハ、WIRE
Dの日本出版社、最近未公開株の販売で有名になったDブレインなど、約
500社に売れて、当時、国内のサーバー販売本数で1位になった。
それが、ペンシルのインターネットサービスの始まりでもある。
レコード屋さんも「.comドメイン」サービスも、自分が欲しい高品位
なものを、いかに早く安く手に入れるかを追及して、自然に生まれたサー
ビスで、その点では、どちらも同じである。
両方をみてみると中学生の時の僕と、今の僕は何も変わっていない。
ただ、違うのはインターネットというものがあるかないかの違いだけだ。
レコード屋さんをやっていたときは、新聞を手書きで作り、それをコピー
して、手で配るということをやっていたが、「.comドメイン」サービ
スは、ホームページを作り、インターネット上に告知をしただけで、国内
1位の売り上げを達成することができた。
これはインターネットのすごいところで、無名の会社でもそのサービスが
本当によければ、ホームページを使って告知するだけで、簡単に広がり、
大手企業と直接取引ができて、また、先払いでどんどんお金を振り込んで
くれる。
これこそが、インターネットの醍醐味で、小さい会社も大きい会社も平等
に闘うことができる。
もし、レコード屋さんをやっていた頃に、インターネットがあったら、僕
は今でも、レコード屋を続けていて、面白いレコード屋をやっているんだ
ろうなぁと思う。
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